職務経験のアピールの仕方を精査する
公務員への転職では、職務経験論文が必ず課されます。今の会社でどのような仕事の経験をして、それをどのように市役所の仕事に活かすのかを問う論文試験です。
また、この論文の内容については、面接試験やプレゼンテーション面接においても繰り返し突っ込んで成果を尋ねられます。
職務経験のアピールの仕方が、経験者試験に合格するキーポイントになるのです。アピールする業務内容を厳選して、その提示の仕方まで、しっかりと練りこむ必要があります。
経験者採用は30歳前後を想定している
民間経験者採用では、5年以上の職務経験を求められる場合がほとんどです。稀に3年以上という募集条件もありますが、多くは5年以上です。
ここで気になるのは、どの程度の成果を出していれば合格できるのかという点です。民間企業での成果を挙げた経験を引っさげて公務員に転職するわけですので、短絡的には、5年間で驚くほどの結果を出した人だけが転職できるのかと思ってしまいます。
しかし、実際には違います。特別な経験や実績がなくても、正社員で総合職であることが前提ですが、30歳前後で普通に転職できるのです。
何より会社に入ってたった5年でインパクトの大きな仕事を独力でやりきることは不可能です。人に自慢できるような大きな成果は、40歳くらいになって管理職になり、その中でも一部の優秀な人だけが達成できるものです。
もし、純粋に仕事の成果だけで合否を判断するなら、40歳の課長や50歳の部長クラスの方が圧倒的に大きな成果を挙げています。しかし、実際には30歳前後の受験者の合格率が高いのです。ベテラン従業員と比べて成果がそれほど高くないはずなのに、合格する人は多いのです。
もちろん40代の人でも合格者はいますので、諦める必要はありませんが、若手に比べれば不利であることは事実です。
しかし、民間経験者採用の主なターゲットは30歳前後の若い労働者なのです。
どの程度の成果を出せばいいのか
30歳前後では、会社を飛躍させるような飛び抜けた成果は出せません。せいぜい、難しい課題を2年~3年頑張って何とか成し遂げたという程度のものです。
私は、会社の遊休地を整理して売却していった経験を成果としました。入社1年が経過したくらいから取り組み始めて、3年がかりで成果を出した仕事でした。
実際にかなり労力が掛かった仕事で、会社の役員への説明、従業員への説明、地元住民への説明など、困難を極めました。ただ、私が1人でやり遂げたわけではなく、周囲のサポート受けながらやり遂げたものでした。その程度のものでいいのです。
自分1人で全てやり遂げたり、部下をまとめ上げてやり遂げたようなレベルまでは求めていません。公務員側としては、仕事のノウハウが欲しいのではなく、若くて優秀な人材が欲しいのです。
自分が中心となって成し遂げた成果を論理的に説明できれば、それで十分です。
30歳前後まででやらされるよくある仕事では、システムの改修があります。ベタです。会社にはいろいろなシステムが存在します。そしてそれらは概ね10年ごとにシステム改修という大仕事が必要になります。
私も、人事給与システムの改修作業に携わりました。これは最終的にコストメリットを出すという分かりやすい成果がありますので、アピールしやすいものだと思います。ベタ過ぎて、私は選びませんでしたが(笑)。
営業職では新規顧客の開拓がよくあるパターンです。数年間、営業を続けていますと、上手く利害が一致して新規顧客を開拓できる瞬間があるものです。
機械の営業職だった私の同期の手柄では、普段仲良くしている中小企業の工場の社長と雑談をしている中で、機械のパーツを一部付け替えるだけでユニークな商品を生産できるようになったという事例があったそうです。
機械の出荷数が飛躍的に伸びたという成果です。営業職では自分の手柄を説明しやすいと思います。しっかり整理して、論理的に提示することが重要です。
一方、スタッフ職ではなかなか目に見えた成果を挙げることは難しいですが、例えば、社内制度の新設や変更などが分かりやすいです。私もスタッフ職でしたので、制度変更に携わったことがあります。社内満足度の向上のための仕事でした。
この場合、金額的には説明しにくいですが、その必要性や得られたメリットをしっかり説明することで成果としてアピールできると思います。
30歳前後になれば、一定の成果を出しているものと思います。いかにそれを論理的に説得力をもって説明できるかに懸かっています。
昔の成果をアピールしてもいいのか
自分の成果を説明する際、いつ出した成果をアピールすればよいのでしょうか。私の場合は、以前の会社で人事部という1部署だけの経験で異動なしでした。このケースは分かりやすくて、今の仕事の成果をアピールすればよかったです。
異動をして1年目というのが一番困ります。前の職場では大きな成果を出していても、新しい職場ではたった1年でなかなか成果を出せないものです。
その場合は、前職場での成果をアピールしても問題ありません。厳密に何年前までがOKなのかという基準はありませんが、常識的には2年~3年以内に出した成果とするべきです。
あまりに昔の成果ですと、それ以降何も成長していないかのような印象になってマイナスです。
前職場の成果をアピールする場合、それだけでも大丈夫なのですが、欲を言いますと、その大きな経験を今の職場の仕事にも活かしているという構成にすると高評価になります。
会社の人事異動というものは、人材育成の観点が必ず含まれるものです。一見、何ら関係のない仕事に異動したとしても、大所高所から見ればあなたという人材を育てる意思があるものです。
こじつけでもいいですので、身に着けた能力が今の仕事にも結びついているというアピールができるようにしておくと、合格に近づけると思います。
また、転職した経験のある人の場合は、原則は今の会社での成果をアピールするべきです。
しかし、転職1年未満でなかなか成果と言えるものがないケースでは、仕方がありませんので、前の会社の成果を持ち出すしかありません。異動と同じように、今の会社の仕事にも結びついているという視点も付け加えてしっかりとアピールするといいと思います。
求められる職務経験のモデル
基本的には、正社員の総合職で5年以上勤務していることが求められます。総合職とは全国転勤を前提とした将来の幹部候補生のことです。女性事務職に多い一般職ではかなり厳しいと言わざるを得ません。
また、募集条件では正社員に限定されていませんが、実際には、派遣やアルバイト、嘱託職員では合格することはかなり困難です。はっきり言いますと、無理だと思います。
就職氷河期世代の人は、なかなか正社員になれないような扱いを受けてきました。身分が派遣や嘱託であっても、実際にしている仕事は正社員と何ら変わらないというケースもあると思います。
それでも、求められるのは正社員として勤務してきた社員なのです。
一見同じ仕事をしているようでも、正社員は会社からの大きな期待値を背負っています。それは研修であったり、厳しい指導であったり、陰に陽にと成長を促されます。派遣社員ではそういう経験が不足しているのです。
仕事内容は一見同じであっても、積んできた経験は同じではないのです。世の中の実態を見たときに、この考え方には賛否両論ありますが、私はこれが事実だと思っています。
そして、世の中の多くの人もこれが事実だと思っています。つまり、実態がどうあれ、これが事実となってしまっているのです。
公務員への転職は正社員が圧倒的に有利です。と言うか正社員でないと無理なのです。
結局合格するのは民間でも通用する人材ばかり
民間会社が嫌で公務員に転職したい人は多いと思います。私もそうでした。一生転勤族なのが嫌でした。自分で言うのも何ですが、公務員に転職できる人は、民間会社でも通用する人材ばかりです。
民間会社が嫌=民間会社で役に立たないという構図ではないのです。私の同期の転職組でも普通に仕事ができる人が多くいます。
公務員には実際に役に立たないような人材が多くいます。民間会社と公務員の両方を経験から言いますと、公務員の方がその割合は多いような気がします。
しかし、民間経験者採用という試験で民間会社から公務員に転職してくる人材のレベルは比較的高いです。まずは、今の会社でしっかりと成長して成果を挙げることが転職への第一歩になります。
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