公務員という資格なない
民間会社に勤めている友人に、「公務員に転職しないのか?」と問いかけたところ、「公務員の資格勉強ができないから無理」と断られたことがあります。完全な誤解ですが、実際にそういう誤解は多いようです。
新卒での就職もそうですが、公務員に転職するのに資格は必要ありません。弁護士資格と同じような「公務員資格」というものは存在しません。単に筆記試験に合格して、面接試験に合格すれば晴れて採用されます。
こういう誤解は、新卒での公務員試験の筆記試験が難しすぎて、東京アカデミーや大原などのいわゆる公務員予備校に1年間通って勉強する必要があることから生まれたものです。
確かに新卒試験の出題範囲は莫大で、憲法、民法から始まって地方自治法、地方公務員法など、広範な範囲から出題されます。
一発合格を目指すなら、必然的に勉強するべき期間は1年間は必要になり、大学3年生のはじめくらいから大学と公務員予備校のダブルスクールになります。
しかし、これはあくまで法律の勉強をしているだけで、資格取得のためではありません。また、社会人採用では筆記試験のウエイトはかなり小さいですので、そこまで勉強する必要はありません。
せいぜい3箇月前、長くても半年前から、トータルで50時間~100時間程度の勉強で済みます。公務員資格という特別な資格を取る必要はないのです。そもそもそんな資格はありません(笑)。
公務員の応募条件は年齢と職務経験だけ
公務員という資格が存在しないことを説明してきましたが、応募に必要な条件はあるのでしょうか。職務経験という当たり前の条件を除けば、基本的には年齢条件だけです。市役所によって異なりますが、30歳から59歳までなどと定められています。
つまり学歴すらも不問なのです。資格など関係ありません。そもそも公務員資格という資格は存在しないのですが(笑)。
1点注意が必要なことがあります。学歴は応募条件には定められておらず、高卒でも、極端なことを言えば中卒でも応募可能です。しかし、合格するかどうかという視点では、かなり厳しい状況です。
民間経験者採用の職員は大卒の上級試験の職員と同じような役割を求められます。モデルとしては、大卒でサラリーマンになって、5年なり10年なり勤務した後で、公務員に転職するケースです。
原則、大卒の人ばかりが合格します。事務職、つまり行政職では100%大卒です。技術職の場合、実務経験を評価して高卒の人が合格することも稀にあります。
資格免許職は話が別
保健師や薬剤師、学芸員など、そもそも資格免許の保有が前提の職種があります。この場合は話が別です。必ず保有している必要があります。
しかし、これらは一般的な職種ではありません。事務職と比べると人数は圧倒的に少ないです。
こういう職種の存在が誤解の発端になっているのだと思います。普通の市役所の職員になるには資格は必要ではありません。筆記試験と面接試験に合格しさえすればよいのです。
事務職では有利な資格はない
公務員資格という資格が存在しないことは分かりましたが、所持していると有利になる資格はあるのでしょうか。
事務職、つまり行政職では、資格で有利になることはほぼありません。弁護士や司法書士など難関資格を取得していれば、それは有利になるかと思いますが、現実的に、弁護士などで職務経験がある人が市役所職員に応募してくることはありません。
社労士や行政書士など、割と取得しやすい資格の保有者が応募することは多くありますが、特段有利には働きません。重要なのは、社会人経験でどのような成果を成し遂げてきたかという点に尽きます。
ただし、公務員試験というものと勉強範囲が一部重なるという点で有利になることはあります。ただそれだけです。
国家資格との難易度の比較
公務員試験の難易度をイメージするために、国家資格との難易度の比較をしてみます。
まず、公務員は弁護士や司法書士よりは圧倒的になりやすい職業だと思います。一方、宅建や簿記など自己啓発レベルの資格取得よりは難しいです。
行政書士よりも若干難しく、社労士と土地家屋調査士よりは簡単です。つまり、市役所の公務員の難易度はこの間くらいだと言えます。誰でもなれるわけではありませんが、少しの期間だけ努力を積み重ねればなれるというのが現実だと思います。
技術職では有利な資格がある
技術職では資格の保有者はかなり有利になります。事務職との大きな違いです。専門職の資格を持っていて職務経験もある人、これ最強です。後は性格が良さそうなら合格します。
技術士は技術系の最難関資格と見なされていますので、どの部門でも高評価です。1級施工管理技士も土木・建築・電気工事ともに高評価です。
電気職では電気主任技術者が高評価です。3級で十分です。というか2級以上を取得している人は現職の職員でも数少ないです。建築職では建築士です。1級でも2級でも高評価です。
環境測量士、公害防止管理者、エネルギー管理士もややマニアックな資格ですが、きちんと評価してもらえます。
このように評価が高い資格は職種ごとに異なりますが、今までの職務経験に関係した資格を取得していれば、合格の可能性はかなり高まります。
資格手当はもらえない
公務員に資格手当はありません。せっかく有用な資格を持っていてもお給料は増えないのです。
電気主任技術者を保有していて、事業所の電気主任を任されていても、給料は全く増えません。当然ながら責任は増えますが(笑)。それが公務員の世界というものです。
それゆえに、現職の公務員は資格取得にそれほどモチベーションは高くありません。いくら尻を叩いても、なかなか自ら勉強して電気主任技術者検定を受検してくれないのです。受験補助制度もあるのに受けてくれないのです。
技術職の仕事でステップアップしていくには資格取得が欠かせません。民間会社で職務経験があって、しかも必要な資格を既に取得しているとなれば、採用試験で圧倒的に有利になるのです。
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