なってよかった公務員
私は一部上場の大手企業で6年間働きました。東京勤務でした。公務員の経験者採用に合格して、地元の市役所に転職しました。
転職後、友人から転職して後悔はしていないのか聞かれることがあります。一旦、公務員になってしまいますと、二度と民間企業には戻れないと言われているからです。
今回は転職と後悔についてお話します。
私個人の意見ですが、後悔は全くありません。ゼロです。むしろ、今も前の会社で働いているかと想像するとゾッとします。
もっとも、市役所は市役所で、10年も働いていますと毎日辞めたくなります。何とかフリーに転身して、自営業や個人事業主、士業で生きていけないかと本気でいつも模索しています(笑)。
しかしながら、少なくとも前の会社と比較して、転職を後悔したことはありません。とりあえず10年間は市役所の給料で飯が食えてよかったと思っているのが現実です。
もし前の会社に勤め続けていたら転勤地獄
前の会社でズルズルと働いていた場合の恐怖の未来予想図です。
【パターン1】
30歳、結婚して子どもが生まれて、新築の家を建てる。31歳、建てたと同時に地方転勤となる。当然のように単身赴任。その後、子どもとの時間は皆無の人生を送る。
なお、前の会社は4月に定期異動ではなく、毎月異動があります。異動の内示は2週間前です。会社上層部の思いのままに2週間の準備期間で、仕事の引継ぎと引っ越し、プライベートの清算をしていく必要があります。
全従業員の10%が単身赴任生活をしていました。
【パターン2】
28歳、結婚する前に地方転勤になる。遠距離恋愛になり、なかなか結婚できない。その後も数年で突然の転勤を繰り返す。出会いと別れを繰り返し、40歳、結局独身のまま課長になる。
会社から見れば、課長になったら仕事一筋。その後はプライベートなど一切なし。趣味は年に1回行く接待ゴルフ。住まいは会社の用意した独身寮。
これ、どちらも前の会社では結構あるあるのパターンです。
人間関係に嫌気がさしていた
私は、「長時間働いて、会社生活が人生の全て」という社畜主義の社風に嫌気がさしていました。そういう価値観を押し付けてくる上司や中堅社員にも嫌気がさしていました。アホなのかと思っていました。
私は人を嫌いになることは滅多にありませんが、前の会社には嫌いは人が結構いました。
例えば、日曜日に名古屋支店の課長から家に電話が掛かってきて、「社宅の水道が壊れたので、何とかして」「あなた、人事部でしょ?」と言われたことがあります。
ここ東京ですよ?と思いましたが、訳が分からないので、「とりあえず出勤して、どうすればいいか調べます」と言った記憶があります。
会社丸抱えの人生ですので、水が出ない=会社の若手に言いつければいい、という思考回路なのです。この人は今でも嫌いです。そして嫌われています。いえ、もう忘れられているでしょうが、当時は嫌われていました。
ちなみに、会社の総合職全員の住所と電話番号の名簿が毎年作成されて、総合職全員に配布されます。名古屋の課長はその名簿で私の電話を調べて掛けてきたのです。リアルにゾッとしました。
こんな感じで、嫌いな従業員が結構いて、同時に私は嫌われていました。
私は、独自に草野球チームに入って、日曜日に活動していました。それも原因で結構嫌われていました。趣味に生きるなど考えられないからです。
当時の上司に趣味を聞いたことがあります。「やっぱり、ゴルフかな~?3年くらいは行ってないけど」という答えでした。3年行かずに趣味なんだ、と引いたことを今でも鮮明に覚えています。
市役所に転職してからは、趣味の草野球はランニングを心置きなく続けています。昼休みにランニングに行くこともあります。それを受け入れてくれる社風です。
人によっては、テニスのラケットを持ってきたり、サックスなど楽器を持ってきたりする職員もいます。人それぞれに趣味を持っており、業務後に楽しんでいます。
前の会社とは全く異なる価値観で、後悔の余地などありませんでした。
独身寮という非プライベート空間がきつかった
前の会社では、入社と同時に、強制的に、というか当然でしょ?という感覚で独身寮に住まわされました。
食堂もトイレも風呂も共同の、文字通り共同生活です。会社から帰ってきても、会社の先輩がいるのです。それだけで反吐が出ますよね(笑)。
私は、週に2・3回は仕事後の夜中にジョギングをしていました。もう変人扱いですよね。他の先輩は食堂でだべってテレビ見てるのに。
まずもって、新入社員でいきなり人事部に配属されたことも、一部先輩社員の反感を買いました。自分は営業で汗水流しているのに!みたいな感じです。
基本的に営業職員が大多数なので、独身寮でも営業派閥みたいな一大勢力ができあがっていて、やりづらいことこの上なしでした。
入寮2週間後には、新人歓迎会が催されました。独身寮のドンみたいなベテラン独身社員(笑)がいて、1人ずつ一発芸をやれと言うので、ドン引きしながら順番にしていったことがありました。
同期のよく知らない奴と男同士で口移して酒を飲ましてみたいな芸をしました。文字通り吐く一歩手前まで追い込まれました。
ドンが言うには、昔は深夜に全裸で駅まで走らせて、証拠に切符を買ってこさせたらしいです。逮捕されたらよかったのに。
その後、4月の終わりには、自分で部屋を借りて独身寮を退寮しました。そうしないと、たぶんこの会社には6年間も勤めることはできなかったと思います。
家賃3千円の独身寮を退寮して、そういう行動を取ったのは私だけでした。社内で逆にドン引きされましたが、自分的には思い切ったナイス判断だったと思います。社内のしがらみを知る前でしたので、できた行動でした。
市役所には社宅や独身寮というものがありません。職員同士で集まって共同生活するという発想がまずありません。
実家がいい人は実家に、一人暮らしが好きな人は自由に部屋を借りて住んでいます。すごく当たり前のことだと思います。やはり後悔はありません。
我慢に我慢を重ねた民間会社での6年間
よくそんな環境で6年間も働いたと自分でも思います。当時は就職氷河期で、まず、一部上場企業の業界大手に就職できるのは、ごくごく一握りの学生だけでした。当然、数年で辞めた場合、再就職は不可能でした。
第二新卒なんていう言葉ができたのは、空前の売り手市場になって、企業がそういうB級人材でもいいから採用したいとなってからです。当時の退職者は、全員派遣、非正規のオンパレードでした。
そういう我慢を積み重ねた上で勝ち取った転職でしたので、今まで1回も後悔をしたことがありません。どちらがよかったかという比較すら考えたことがありませんでした。
終身雇用制度が大多数の日本で、会社を辞めて公務員になるというのは、今考えると思い切った行動でした。自分が独身だったからできたことなのかもしれません。
公務員に転職して以降は給料は下りました。大手企業に勤めている大学の友人よりも給料やボーナスは安いです。しかしながら、私は転職を後悔したことは一回もありませんでした。お金よりも価値観の方が重要と考えています。
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