営業職の自己アピールの仕方
一般の人にとっては、市役所の仕事を具体的にイメージすることは難しいかもしれません。せいぜい、市役所の窓口で住民票を発行している姿くらいでしょうか。
今の会社で営業職としてバリバリ働いている人にとっては、自分の仕事がどのように市役所の業務に活かせるのか全くピンとこない人も多いでしょう。
食品メーカーで営業部に所属している場合、新商品の冷凍食品を問屋やスーパーに営業で押し込むことは得意だと思います。それが市役所の仕事にどう結びつけるのかという疑問です。
営業の仕事と市役所の仕事を結びつけるキーワードは、ずばり「調整力」です。
例えば、研究所部門と商品開発部門が、新商品の冷凍たこ焼きを開発したとしましょう。あなたは、新商品の特徴である超カリカリ食感を武器に、飲食店や問屋への営業活動を進めることでしょう。
そのまま新商品が売れてくれれば何の苦労もないのですが、普通は、ここで様々な要求に出くわします。飲食店からは「もっとカリカリにしてほしい」と言われ、問屋からは「あと1割値引きしてほしい」などと言われます。
そこで、営業マンはそれぞれの要望を会社に持ち帰って、上司に報告して対策を考えて、職場内で共有します。なんとか改善できそうだという手応えがあれば、商品開発部門に掛け合って、現場の要望を伝えます。
顧客の言うことをそのまま伝えるのではなく、職場内で調整を図って、現実的な方策を考え出して、それを伝えると思います。
また、開発者と競技を重ねていく過程で色々な妥協をして、その方策をブラッシュアップしていきます。
多くの課題を乗り越えて、納得の行く商品を開発できて、顧客も納得してくれた後は、工場でのラインテストがあります。実際に大量生産できるのか、製造部門とも調整が必要になります。
1つのヒット商品を生み出すために、営業部門として調整能力を発揮する必要があります。そのため、営業マンには調整能力が高い人が多くいる印象です。
しかし、大いに役立つ高い調整能力を持っているにも関わらず、それが地方公務員の仕事にどのように関係するのか知らない人が多くいます。
市役所では新商品の冷凍たこ焼きを市民に売り歩くことはありません。そもそも、基本的に営業活動がありません。その中で発揮するできる力は「営業力」ではなく「調整能力」なのです。
市役所の仕事はほぼ調整能力のみ
市役所の仕事のうち、窓口の証明書の発行業務などは極めて些末な仕事です。基本的に定年間近の窓際族が行く出先機関のポストです。
30代・40代のバリバリ働く職員の仕事は、市役所の本庁で政策の立案や、土地の有効活用、議会対応などに当たります。ここで必要になるのが調整能力です。段取り力と言い換えることもできます。
市立学校の跡地にホテルなどの商業施設を誘致する業務を例にご説明します。まず、本当にその跡地を売ってしまってよいのか、将来的に市役所で必要になるのではないかという検討を市役所内でします。
各局の思惑が絡んで難しい調整になりますが、今後の市内の土地需要予測や市の財政の観点から妥協点を探ります。
市役所内での調整が済んだ後には、地元調整が待ち受けています。商業施設は地元住民にとっては迷惑施設です。それで地元振興になろうがなるまいが関係ありません。平穏な生活が一番なのです。
どのような施設を誘致するのか、例えば、福祉施設も併設した施設にしたり、地域のコミュニティスペースを設ける設計にしたり、色々と妥協の産物のプランが生まれます。
この地元の要望について、誘致する企業が受け入れてくれるのかという難しい調整もあります。こういうビッグ案件では3年くらいは調整続けることになります。
また、地元の代表者である市議会議員からも矢のような要望が飛んできます。重要プロジェクトであれば、県や国との調整も必要になります。
それぞれの思惑は立場によって全く異なります。全員が同じ方向を向くことはありませんが、何とか全員が納得できる案を導き出す必要があります。正に調整能力です。
実際に企業に土地を売る際にも、競争入札にするのか、プロポーザル方式にするのかなど、山ほど局内調整を要する仕事があります。
予算の制限もあります。土地の境界確定や土壌汚染調査に要する費用など、必要な手続きを全て予算内で成し遂げる必要があります。
地方公務員の花形の仕事の核心はこの「調整」なのです。しょうもない仕事ですが(笑)。
調整のコツは、関係者を満足ではなく納得させること
面接試験では、今まで会社で経験してきた調整力をアピールすればいいのです。ここで押えておきたいのは調整というのはただの妥協ではないということです。
考えてみてください。あなたも今の仕事で上手く言った成功事例は、妥協の産物ではないはずです。妥協ではなく、「納得」だったはずです。
行政という組織は基本的にお金がなく、財政的に厳しいという大きな制約があります。その制約の中で関係者全員の要望を満たすこと、つまり「満足」させることはできません。
新規プロジェクトを成功させるには、満足ではなく納得を目指すべきです。
各方面にその施策の重要性やメリット・デメリットをしっかり説明し尽くして、100%満足ではないけれども、まあ納得という状況を作り出すことが重要なのです。
基本的に、どのような商品を扱っている営業マンでも社内での調整事務というものを経験してきています。こういう構成で、営業職での成功体験から自分の調整力をアピールするのが鉄板です。
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