膨大な量の勉強資料を作成する
市役所で最も不毛で最も手が掛かる仕事が、市議会の対応です。市議会議員は市役所のお目付け役を自認していますので、手が掛かるのです。過剰な対応を重ねるからです。
私の市役所では、市議会の本会議は年に4回開催されます。その開催月には残業が100時間を越えます。普段の日常業務をこなしながら、追加で市議会の準備をするのです。
この準備がこれまた不毛なのです。
先生方は、一般質問で色々と質問をしてきます。国会でも、質問取りと答弁作成などと、徹夜の仕事の代表事例として紹介されています。
しかし、実情は質問を受けてから作成するよりも、事前に準備をする時間の方が膨大な時間が掛かるのです。
先生から質問されそうなことをリストアップして勉強資料を作成するのです。
部局ごとに作成するのですが、私の部局では、局内で共有する勉強資料は100項目で400ページほどの冊子になります。局長・部長が勉強する資料です。
これを各課で分担して作成します。私の課では10項目40ページ分を作成するのです。根拠となる数字の資料を集めて、今までの歴史的経過を調べ上げて、文章を試行錯誤してと、膨大な時間を要します。
また、この局内の勉強資料には、各課から10項目しか盛り込めませんので、これとは別に課内の勉強資料を作成します。50項目200ページ分くらいは作成します。
これだけの資料を作成して、事実と相違がないことをチェックしてという作業は、果てしなく不毛な時間です。
民間会社で働いていた感覚では、市議会議員から質問を受けた時点で、資料を集めたり回答を作成したりするのが効率的だと考えます。
しかし、市役所の議会対応では、その考え方は通用しません。質問を受けた時点で、ほぼ回答が固まっている必要があるのです。
市役所の職員は昔からそうやって仕事をしてきましたので、今でも、これからもそうしてやっていくのです。その理由は不明です(笑)。
ちなみに、これだけ膨大な勉強資料を作成しても、実際に質問を受けたりして役に立つ部分は5%くらいのものです。残りの95%は日の目を見ることなく、ひっそりを役割を終えます。
事前にこれだけ準備するのは、市役所を挙げた壮大な自己満足だと思います。
結局、深夜まで議会対応する
市議会で実際に質問通告を受けた場合、そこから壮大な回答作成作業が始まります。事前準備であれだけ壮大に準備をしていたのにも関わらず、深夜まで作業は続きます。
朝一で質問通告を受け取りますが、回答作成が深夜まで続くのです。
部局をまたいだ質問の場合、さらに大変です。例えば、洪水対策の質問でしたら、河川管理の建設局、下水部門の下水道局、街づくりの都市計画局の共管になります。
各局が20行程度ずつ回答を作成します。回答は最終的に市長勉強会に掛けられるのですが、下準備がすごいのです。
まず、各課で下案を作成して、それを元に局長勉強会を開きます。ダメだしが入りますので、好みに合うように修正をします。そして、時間を調整して再び勉強会。この繰り返しです。
文章というのは個人の好みの問題もありますので、なかなか定まりません。昼過ぎにようやく局案が完成します。その後、共管の部局と文言調整に入ります。
夕方にはトータルの回答案が完成しますので、市長・副市長の勉強会に入ります。この待ち時間がすごいのです。
各部局が色々な質問の回答案を個別に市長・副市長に報告に入りますので、順番待ちが発生します。1時間から2時間くらいは待つことになります。
局長から係員まで、大の大人が20人くらいで行って、2時間待つのです。ようやく勉強会に入って、ダメだしが出て、修正して、再度勉強会をしての繰り返しで、回答案が確定するのは深夜12時くらいになります。
たった20行の文章を作成するのに、丸1日費やすのです。これが公務員クオリティです。変態的なほど、文章を作りこむのです。
一言一句、表現を精査して、回答を繰り上げますが、市長がその答弁を読み上げる際には、勝手にアドリブが入ったりします。せっかくの練り上げた表現が水の泡です(笑)。
議員の家だけ広報する小手先のテクニック
議員からは色々な要望を受けます。気温が高くなってきたので、公用車で熱中症の広報に周った方がいいだの、選挙が近くなってきたので、投票に行くよう呼びかける広報を周った方がいいだのです。
そう言われても、広報は広報できちんとやっていますので、今更、追加でわざわざ広報車で街宣活動をする必要はありません。
しかし、そこは市議会議員の先生の言うことも尊重しなくてはなりません。
私の局で実践している方法は、「先生のおっしゃるとおり広報活動を推進します」と回答しておいて、先生の自宅の周りだけ公用車で広報を繰り返すという方法です。
きちんと広報をしていますので、嘘ではありません。それが公務員クオリティなのです(笑)。しかも、先生自身やその家族の耳に入るので、先生も納得します。
一応、自民党の先生でしたら、自民党の議員全員の自宅の付近を回ります。共産党なら共産党だけです。先生の自宅は当然ながら把握していますので、こういう荒業もできるのです。
シェアする