公務員は年功序列で毎年昇給していく
中途採用で公務員に転職した後、どのような昇給カーブを描いて給料が上っていくのでしょうか。募集要項には初任給の情報しか記載されていません。
公務員の給料は、毎年必ず昇給していきます。中途採用であっても新卒採用の生え抜きの職員であっても違いはありません。
係長や課長に昇進しなくても、給料は増えていきます。これを定期昇給と言います。民間会社でも定期昇給は普通に運用されている制度です。略して定昇とも言います
昇給にはこの定期昇給とベースアップの2種類があります。定期昇給は必ず毎年ありますが、ベースアップはある年とない年があります。むしろ、ない年の方が多いです。
また、係長などに昇進した場合にも給料が上がります。まず、これらの制度についてご説明します。
定期昇給の仕組みとは
定期昇給というのは、毎年給料が増えることです。しかし、特定の個人だけ見れば給料はアップしていますが、職員全体としてみた場合、賃上げではありません。
例えば、市役所に21歳~60歳まで1人ずつ40人の職員がいるとします。
分かりやすいように、1年ごとに1万円昇給するとして、21歳の給料は21万円、22歳の給料は22万円、・・・そして60歳の給料は60万円となります。計算すると、全体の給料は1620万円になります。
毎年、1歳ずつ年を取っていきますので、21歳の職員は、次の年には22歳になって、1万円昇給します。そして、21歳の職員が新規採用されて、60歳の職員が定年退職します。全体の職員数は40人のままです。
特定の個人だけを見れば、1年後には1万円昇給していますが、全体の給料は1620万円のままです。つまり、雇用者側から見れば、賃上げではないのです。
市役所では、この定期昇給制度が導入されています。若いうちは必ず給料が安くて、年を取るほど必ず給料が上っていきます。いわゆる、年功序列の制度です。
1年での給料の上がり幅は規程で決まっています。仮に、仕事ですごくよい成績を残して、市役所の業務に大きく貢献したとしても、この上がり幅は同じです。逆に、ずっとサボっていても同じです。
中途採用の昇給実績
私は30歳で市役所に転職しました。その時の給料は、固定的な給料だけでおよそ26万円でした。実際には、これに残業代が加算されて、税金が控除されたものが手取り給与になります。
残業代は毎月の仕事の状況によって変動しますので、昇給の仕組みとしては、除外して考える方がいいと思います。
中途採用の職員も、新卒で採用された職員も、昇給の仕組みは同じです。同じ定期昇給で給料が上っていきます。
中途採用の給料は、大卒ストレートで採用されて30歳になった職員と比べて2万円ほど安くなっています。
そこを出発点として、毎年4月1日に、定期昇給で8千円くらいづつ給料がアップしていきました。係長などに昇進しなくても、今後、このペースで増えていきます。
年功序列の制度ですので、大卒ストレートの職員の給料に追いつくことはありません。しかし、毎年必ず昇給していって、途中で、特別昇給というものも加わってきますので、40歳、50歳になったときには、そこそこの給料には到達しています。
余談ですが、民間会社では、業績悪化に伴って、1年間定期昇給ストップなどという場合があります。これは明確な賃下げに当たります。
自分の給料が下ったわけではないため、気が付きにくいのですが、賃下げなのです。若者の給料が不当に低く抑えられたままになっているのです。
そういうことをしっかり説明しないような会社に勤めている方には、転職をお薦めします。色々な局面で雇用主に搾取されているおそれがあります。
昇進した場合、給料はどれだけ増えるのか
昇進して役職が上った場合にも、昇給します。市役所では、係員のままでも昇進があるのです。
転職直後は、普通の係員としてスタートします。そして、しばらく勤務を続けて、一定の年齢に達すると主任に昇進します。係員のリーダー的役割という位置付けです。
この昇進で給料が1万5千円ほど上ります。定期昇給の8千円も必ずありますので、その年は合計で2万3千円ほど上る計算になります。
そして、この主任というのは私の市役所では形骸化してしまっています。本当にリーダーになるわけではないのです。
一定の年齢になった職員は全員主任になります。係によっては、係員が10人して、そのうち8人が主任だという笑えない状況も普通にあります。全員主任だという係もあります。
昇給のためだけにあるような主任制度なのです。
また、その後、人によっては、係長、課長補佐、課長と昇進していくことになります。その都度、1万5千円ほど給料が上るのです。
公務員には特別昇給がある
私の市役所では、定期昇給のほかに特別昇給というものもあります。略して特昇と言っています。これは市民に内緒でこっそりと職員の給料を上げているもので、ずるい制度ではあります。
具体的には、採用1年後に特別昇給で4千円ほど上りました。定期昇給の8千円と合計で1万2千円のアップです。
また、主任、係長、課長補佐、課長に昇進した1年後にも特別昇給で4千円上ります。昇進1年後特昇と言っています。定期昇給と合計で1万2千円アップになります。
さらに、勤続25年のときにも、永年勤続の特別昇給で4千円上ります。このように、公務員の給料は勤続年数が長くなればなるほど高額になっていく制度になっています。
このように、中途採用で市役所に入った場合、民間会社時代の給料と比べて初任給は安いかもしれませんが、長い目で見たときに、昇給幅は多い制度になっています。
ベースアップの仕組みとは
定期昇給のほかに、ベースアップ、いわゆるベアがあります。民間企業と同じです。ただし、ベアの決め方は民間企業とは大きく異なります。
ベースアップとは正に賃上げです。会社の利益がすごく上った場合や、会社の生産性がすごく向上したような場合に、全従業員の給料を一律に引き上げることです。
民間企業では春闘の労使交渉で決定されます。一方、市役所では労使交渉ではなく、人事委員会の勧告で決定されます。
あまり知られていませんが、市役所の給料水準は、市内の一定規模以上の全ての会社の給料の平均値から決定されるのです。
人事委員会がこの調査を1年掛けて実施して、そこから算出された平均値が昨年よりも上っていれば、つまり、民間企業でベースアップが実施されていれば、市役所の給料もアップします。
ベースアップというのは100円・200円の単位ですので、かなり小額なのですが、年によっては、全職員の給料が底上げされることもあるのです。
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